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天空の聖堂

春です。お散歩日和ですね。前回は字ばっかりでウンザリした人も多いと思いますので、イメージ多めでいってみようとおもいます。

東急池上線・池上駅に降り立つ。
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門前の駅と言うのは、なぜかそれらしい雰囲気をもっていて面白い。
お彼岸だったからだろうか。とても賑わっている。
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これが池上本門寺への参道。実に品のある道である。しかし今回の目的は本門寺ではない。
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池上図書館の手前の緑道を左へ。この緑道が大田区が誇る「六郷用水」跡だ。
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六郷用水の旧流路に沿ってしばらく西へ進むと、、、
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このような立派な石塔が現れる。
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そしてそのすこし先を右折したところが、今回の目的地である。左の水色の壁は池上警察署の裏の壁。
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それではご覧いただこう。これが今回の目的地、天空の聖堂「池上馬頭観音教会」だ。
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どーん!どうです?
実に不思議な光景である。約3メートルはあろうかという土台の上に馬頭観音堂と庫裏が鎮座しているのだ。
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別角度から
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では早速石段を登って参拝させていただきましょう。
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境内(約50坪弱であろうか)。こんな様子である。あまりキレイではないw。(^^;
中央の銅像の方は地主さんで、この観音堂を立て直した方。
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こちらが本堂。正六角形のコンクリート製である。
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建てられたのは昭和37年。天井などだいぶ痛んでいることがわかる。
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正式名称を「池上馬頭観音堂」。全国でも珍しい三面の馬頭観世音菩薩像を中央に安置し、池上七福神の大黒様も祀られている。

それではなぜこの観音堂は3メートルもある盛り土の上に立っているのだろう。
その答えは境内に建つ記念碑に刻まれていた。


この丘は近年まで第二京浜国道西側の久ヶ原の丘に讀いていた ここに観音堂のはじめててきたのは當堂奉安の御本尊によると今から二百八十二年前の延宝八年五月十八であつた 初代以来この土地の所有者である小原家に傳わっている本門寺二十三世日潤上人の御本尊には二百四十八年前の正徳四年四月八日に現在の本門寺の大鐘をここで改鋳したと明記してある...(以下略)

境内の石碑『久ヶ原 馬頭観音教会 縁起』より抜粋
※延宝八年は西暦1680年


なんと!この高台は、かつて西側の久が原台地の先端部であり、第二京浜国道を通すにあたり切通しとなり取り残された、ということなのだ。第二京浜国道の着工は昭和十一年(西暦1936年)である。

地図で位置を確認してみよう(Googleさんいつもありがとうございます!)。赤丸が池上馬頭観音堂である。すぐ西となりは「池上警察署」
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そしてこれが池上馬頭観音堂近辺の段彩陰影図である。なるほど、左にある久ヶ原台地を削り取ったような跡が見てとれる。
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ではどの辺りをどのくらい削ったのか、を知りたくなり先ほどの大田区立池上図書館で資料を求めたところ大正時代の地図を閲覧することができた。
ご覧いただきたい。当時は左側の久ヶ原大地の先端が岬状に伸びているのがハッキリと分かる(赤い星の位置が池上馬頭観音堂)。
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『大田区の文化財 地図でみる大田区(2):大正期の大田区(1:3000地形図):[発行]大田区教育委員会』より
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そしてこれが第二京浜国道着工から一年後の昭和十二年(西暦1937年)の地形図。第二京浜国道はまだ工事中である。こちらは現在とほぼ同じ地形のため標高データをかさねてみた。池上馬頭観音堂の位置にはなぜか神社のマークがある。廃仏毀釈の影響だろうか。余談だがこの第二京浜国道は飛行機の滑走路として使用する計画があったというウワサもある。
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『大田区の文化財 地図でみる大田区(3);大東京・横浜・川崎三千分の一地形図:[発行]大田区教育委員会』より
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現在、池上馬頭観音堂の西側には巨大な池上警察署が建つ。
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第二京浜国道を北側から。ちょうどこのあたりが削り取られた岬があったところ。写真左手が池上警察署。右側が久ヶ原台地。岬は写真右側から左側へと続いていた。
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かつてここが久ヶ原台地から伸びる岬の先端があった場所であることを知る人はどのくらいいるのだろうか。

岬跡に建つ池上警察署ついて『大田ことがら事典:城南タイムス社[発行]』には以下のようにある。


池上警察署
昭和二十四年、池上三丁目20-10、第二京浜国道沿いに開署した。この場所は太平洋戦争中の憲兵隊池上分遺所の跡地で、さらに遡れば隣接する馬頭観音堂の敷地であった。同署の管轄は池上、矢口、馬込の三地区である。
『大田ことがら事典:城南タイムス社[発行]』

さらに偶然庫裏から出てこられた観音堂を管理する方から、いろいろとお話を伺うことができた。上記憲兵隊池上分遺所時代には中国、朝鮮から連れてこられた人々がここへ入ってゆくと帰ってこないことがあったという。ここも一種の刑場跡であったのかもしれない。


上から見てみる。この高さが伝わるだろうか?
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これが反対側。向こう側は池上警察署の敷地である。池上馬頭観音堂の境内だけが取り残されていることが良く分かる。隣のマンションの2階床面より少し高いレベルである。
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池上馬頭観音堂の境内は、ねこさん天国だったりもする。ごはんの時間には近所からわんさか集まってくるのだが、どのコもまったく人になつかない。エサを与える男性すらなつかないらしい。男性によるとねこさんたちの安全のため、あえて「そのように接している」のだという。
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階段の上から。階段を下りた先、住宅地をはさみ向こうに細い路地が延びている。
先の地形図などで確認してみてほしい。実はこの道、来るときに見た石塔につながっている。いまは住宅地に分断されているが実はこの道、池上馬頭観音堂への正式な参道なのだそうだ。
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池上馬頭観音堂の旧参道入り口。この石塔も痛みが激しい。裏には「馬頭観世音菩薩」と掘られている。
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参道。ちょっと暗渠っぽい。
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参道の一番奥。向こう側に池上馬頭観音堂の石段が見える。ぶった切られてなんだか痛々しい感じ。
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また男性が語るところによると、この観音堂の下は戦時中防空壕が掘られており(今は塞がれている)観音堂および庫裏を建て直すには地盤の処理などで多額の資金が必要となるため、今後建物を建て直すことは非常に困難だということである。最悪の場合は土台ごと崩されてしまうかもしれない。

地形的に貴重なこの池上馬頭観音堂。なんとか保護してほしいものである。

※ ※ ※ ※

さて実はこの池上馬頭観音堂、歴史的にも非常に貴重な遺跡なのだ。
当地には馬頭観世音菩薩、大黒天と、もう一人の神様が祀られているのだ。いや一人というか一部というか(笑)

この続きはまた次回!




参考サイト:

ザビエル・カトーの、「煩悩のままに生きてます」
『ドンガラさまとの邂逅』
http://blog.studio-xavi.com/?day=20070411

※ちなみに「邂逅(かいこう)」とは「偶然出会う」「めぐりあい」という意味。

あるときネットで調べ物をしていてたどり着いたブログ。
筆者の友人が大正時代に描かれたお堂の浮世絵が池上馬頭観音堂であることをつきとめ、そこを探訪しレポートしている。非常におもしろいので是非あわせて読んでみてほしい。

なお、上記ブログ中には該当の浮世絵は掲載されていない。その絵については以下のページで閲覧することができる。

『馬込と大田区の歴史を保存する会』より
高橋松亭(弘明)の新版画『雪月花』徳持の夜景

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http://www.photo-make.jp/hm_2/takahashi_tokumochi.html




参考文献:

『大田区の文化財 地図でみる大田区(2):大正期の大田区(1:3000地形図):[発行]大田区教育委員会』
『大田区の文化財 地図でみる大田区(3);大東京・横浜・川崎三千分の一地形図:[発行]大田区教育委員会』
『大田ことがら事典:城南タイムス社[発行]』


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プロフィール

東京マナイタ学会

Author:東京マナイタ学会
刑罰史跡の研究 - 刑場跡、墓場、火葬場、死馬捨場、悪所、その他ひとの嫌がる場所と地形の関連。沖積低地、微地形、川跡、境界、新旧地形図、鎌倉、中世の歴史、明治~昭和の事件。

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